宮川愛李「弱虫」オフィシャルインタビュー

SPECIAL

2024.03.01

6月にメジャーデビュー5周年を迎える宮川愛李が、初のセルフプロデュース楽曲「弱虫」を3/1に配信リリース! ミュージシャンにDr.渡邊シン、Ba.花村智志、Gt.黄勝日を迎え、「Sissy Sky」「プリムラ」「スフィア」など作曲家として多数の楽曲を提供してきた秋浦智裕がアレンジャーで参加。
“日々思い悩みながら全力で生きる皆さんに寄り添って一緒に前に進もうという想いを込めた応援ソングです!”と語る今作について、本人に話を聞いた。

― 今作はリスナーさんからもらった正直な言葉の力も借りて、自分自身も楽曲に正直になって作れたのかなって、そういう気づきがありました。(宮川愛李)―

●バッサリ髪を切られて、何か心境の変化でもあったんですか?
宮川愛李(以下宮川)ここまで短くしたのは初めてなので、「何があったの?」ってよく聞かれるんですけど、特に何もなくて(笑)。ずっと昔からバッサリ切ってみたい欲はあったんですけど、タイミングが掴めなかったんです。去年の夏、「タンバリンの鳴る丘」のリリースキャンペーンで北海道に行ったのですが、暑いし、仕事やり切った解放感を味わいたくて、帰りの飛行機の中で衝動に任せて美容院を予約して、「このまま髪の毛切ってきます!!」と宣言して切ってきちゃいました。
●ボーイッシュで活発な感じも受けますし、逆に今回のアー写やジャケ写からはすごく大人っぽさも感じました。
宮川イメージ変わりましたよね。だいぶ(笑)。
●路上ライブを始めたり、新たな挑戦もスタートしていますね。
宮川昨年の後半辺りから、2024年に向けて新しい挑戦や新しい見せ方みたいなものを模索する中、その一つとして個人的に練習していたギターの技術をあげていきたいという思いが高まっていきました。それで9月頃だったと思うんですけど本格的に練習を始めて、やるからには目標があった方が成長しやすいので、披露する場を用意してもらってという流れでしたね。
●その挑戦の場が路上とは、かなり思い切りましたね。
宮川ギター一本で、一人で喋って歌っているので通常のライブよりも考えることが多いんですけど、自分自身の成長の度合いをダイレクトに感じられるので、そういう面ですごく充実しています。新しい活動の場としては新鮮ですし、ファンの方にも喜んでいただけているようなので良かったです。
●新たな挑戦といえば、新曲「弱虫」は初のセルフプロデュース作品であり、作曲もご自身でされていますね。
宮川作曲は前々から挑戦していたものの、本格的に作品としてリリースしていくタイミングがいまいち定まっていなくて。今回、レギューラーを務めているラジオ番組AIR-G’「IMAREAL」の企画で、リスナーの方々から「学生時代に気持ちが動いた瞬間のエピソード」や、「楽曲に入れて欲しい言葉」を募ったんですね。その企画と絡めて、せっかくなら自分で曲を作って、リスナーの皆さんと一緒に楽曲を作ってみようということになり、「宮川愛李と曲を作ろう!」という企画を設けてもらいました。
●いつも作曲はどのようにしていますか?
宮川これまでは頭に浮かんできたメロディをアカペラで歌ってそれを録音して作っていましたが、今回は初めてDTM(パソコン)で作りました。DTMの機材やソフトは一通り揃えていたので、ゆっくり音を打ち込みながら、初めにコード進行を作って、その後メロディをつけて、仮で歌詞を入れてって流れで作っていきました。
●今作は、実際リスナーさんから寄せられたエピソードや言葉が歌詞に使われているんですか?
宮川今学生の人もですけど、かつて学生だった人も含め様々なエピソードが送られてきた中から、共感できたフレーズを取り上げて繋げていきました。1番の歌詞はほとんど皆さんからのお便りをもとにしていて、例えばサビ前の「大人に変わった今なら まあ なるようになるのにな」のフレーズは、かつて学生だった方からのお便りから引っ張ってきました。
皆さんから送られてきた内容はいい思い出ばかりじゃなくて、「後悔を沢山しています」とか、「あの頃はすごく辛かったです」とか率直な思いが綴られているものも多く、また、「卒業間近で寂しいんです」とか、「大人になることに不安を感じています」などリアルなものもありました。住む場所も暮らしてきた環境も年齢もそれぞれ違うのでバラつきがあるのは当たり前なんですけど、根源にある“全力で生きていた頃の一生懸命さ”みたいなものはどれも共通していて、私自身本当に共感できたし、全部入れちゃいたいって思えるお便りばかりでしたね。
●学生時代の記憶ってなんであんなに甘酸っぱいんですかね。
宮川何も知らないからこそ大人には出来ない生き方だったり、激情が湧いてきたり……、そういう部分が少なからず自分にもあったんだなっていうのを思い出させてもらえたとてもいい時間になりました。学生時代に戻ったような、まあ副産物というか黒歴史まで思い出されたりして「恥ずかしすぎるぅ〜」みたいな事もあったりしたんですけど、それも含めて今回の楽曲に込められたんじゃないかなと思います。
●愛李さん自身、「あと一歩の勇気で変えられた未来があったかもしれない」という後悔を感じているそうですが。
宮川私は高校から都心に来たんですけど、中学生まで暮らしていた地元の式根島で見ていた世界ってすごく狭くて、「何かしら上手くやれるだろう」みたいな自信の方が大きかったんですね。でも高校生になってどんどん世界が広がっていく度に、結局自分って普通だよなって。普通がどういうものかって人それぞれだと思うんですけど、特に自分には秀でたものはなくて、何がしたいのか分からないままきちゃったなって気づいてしまって、自信をどこに置いたらいいのか分からくなった時期があるんですよ。SNSでフォロワーが多いですって言っても、結局それは兄(宮川大聖)のおかげで私はあくまでサポートであって気楽な状態で楽しませてもらっているだけだったので、「何者かにならなきゃ」みたいな焦りがあったりして。ただ学生時代にはその勇気を全然出せなくて、今振り返るともったいない時間を過ごしたなって後悔が多いんです。今年デビュー5周年目を迎えるということで新しい事に挑戦しているんですけど、あの段階で勇気持って行動できていたら、「こういう事がしたいんです!」って確固たるものがもっと早く身についていたと思うし、もっと成長できていた部分が沢山あると思うので、そういう後悔は一番自分の中では大きいです。
●その時の自分に対する思いもあって、「弱虫」というタイトルになったのでしょうか?
宮川今回もタイトルめっちゃ悩みました!! そもそもタイトルをつけるのが得意じゃなくて。なんかダメなんですよ〜、なんなんだろうこの気持ち。今回は初のセルフプロデュースということで、スタッフさんは今までとは違うチーム編成で協力していただいたんですけど、タイトルが決まらないってなった時に今回の制作で一番大きく支えていただいていた方に、『「弱虫」とかいいんじゃないですか?』って案をもらって、結構しっくりハマるなと思ったんです。セルフプロデュースというのもあっていつも以上にタイトルを決めかねていた所、他人の目から見て今作をうまく総括してくれた言葉だなって、なんかスッと入ってきたというか、やけに納得できたんですよね。自分のことを「弱い」って認めたくないが故に出せなかったキーワードでもあるのかなって気づかされて、「じゃあこれで行こう!」って決まりました。
●「エールソングにしよう」というのは初めの段階から決めていたんですか?
宮川そうですね。初めからそういうテンション感で行くつもりではあったんですけど、エールソングだからって安直に「頑張れ」とか明るい言葉だけ使うのも違うなって。私自信学生時代は結構捻くれていたので、その頃の自分がそういう曲を聴いてどうかなって振り返ってみた時に、きっと「うるさいよ」って言いそうだなと思って(笑)。大人に対して不安を持っていたり、尖っていた頃の想いなどを出したくてあえて強めな言葉を使ったりもしてるんですけど、そういう部分では捻くれて素直になれなかったあの頃の自分だったり、今悩んでいる人たちにより身近に寄り添った歌詞やメロディになっているかなと思っています。
●メロディはどの部分から浮かんできましたか?
宮川仮歌詞のデモの段階では、これが本チャンになるわけではないという気楽さから、語感がどうとか深く考えずに頭からバーっと作っていきました。本格的に作品にしていこうと思って本番の歌詞を乗せていった時に、サビ頭の「帰り道〜♪」の所とAメロはそのまま生かしましたが、他の部分は「リスナーさんからもらった言葉をここに入れちゃうと思い出の広がり方が違ってきちゃうかな?」とか慎重に考えながら、かなり時間を掛けて調整していきましたね。今回は、お便りを寄せてくださった方々の想いや言葉を大切にしたいって気持ちが一番にありました。
●これまでの愛李さんの作品は、語感を重視して、文法的には意味がなかったり、造語も多かったと思うのですが、今作は一風変わってまるで日記にメロディをつけて歌っているかのように感じられたのは、そのせいかもしれないですね。
宮川現役の学生さんや、かつて学生だった人に向けた曲を作ろうと決まった時点で、自分の心の内では歌いたいテーマは固まっていたと思うんです。それを歌詞にどれくらい正直に書けるかみたいな……。デビューから今までも工夫して歌詞を書いてきたんですけど、自分の本心をさらけ出すというよりは、“こう魅せたい自分”とか、“こういう風なカッコイイ歌を歌いたい”とか、理想に沿った言葉で作っていたのかなって、この曲を作りながら思ったんですね。今作はリスナーさんからもらった正直な言葉の力も借りて、自分自身も楽曲に正直になって作れたのかなって、そういう気づきがありました。楽曲を自分で作っていく上でなかなか素直になりきれない、正直な言葉を書けない癖が根強く残っちゃってるので、今回はそういう部分をスタッフさんやリスナーの方に支えてもらって引き出してもらえたんじゃないかなって思っています。それこそみんなで一緒に作らせてもらった楽曲として、すごく思い入れ深い一曲になりました。
●パンキッシュさも感じられるストレートなバンド・サウンドも魅力ですね。
宮川学生時代を振り返った時に、静かなイメージよりも軽音部でハチャメチャにセッションしてる感じというか、未完成な部分こそが学生時代を象徴してるのかなって想いがあったので、ちょっとバラつきがあるようなサウンドをあえて意識して欲しいという意見を出しました。
「ここはこうした方が詰まりがないよ」とか、「こうした方がなだらかになるよ」とか、技術的なことをアレンジャーの秋浦さんから学ばせてもらいながら、自分が入れたいテーマをサウンドでも表現できたので満足しています。
●間奏にクラップが入っていたり、ライブでもみんなで盛り上がれそうな曲ですね。
宮川みんなと一緒に一つになれる楽曲があればいいなと思って、そういう部分も意識して作りました。そもそも今までが、「ここでクラップ!!」とか、「ここで掛け声が入る!!」とか指定のある曲が少なかったので、これを機にライブで一体感を出せる曲を今後も発表していければなと思っています。
●ヴォーカル・レコーディングは順調でしたか?
宮川自分で作ったメロディや歌詞だからこそ、もっとここはテンションを上げた方がいいかな?とか細かく考えてしまう事はあったんですけど、「悩みながら歌っている感じがそのまま出た方がむしろいいのかな」というスタッフさんからの意見もあったので、ツルッと歌って、後で微調整するくらいの感じで仕上げていきました。それこそ学校の軽音部のセッションみたいな、あどけなさみたいな所をうまく表現できるように歌っていきましたね。
●サビの最後の声が裏返る「エール」の所は難しそうですね。
宮川確かに、ここはいっぱい録り直しました(笑)。「こういう風に歌いたいんだよ」、「こういう風に歌って欲しいんだよ」ってスタッフさんとバトルしながら作り上げていい感じに仕上がりました。そういう意見交換が自信を持って出来るようになったのも、この5年間積み重ねてきた結果なのかなって感じています。
●他に何か制作エピソードはありますか?
宮川本当にちょっとなんですけど、2番のAメロに私がアコギを弾いています。制作の最中に「せっかくギター練習してるんだから入れたら?」って言われて、自信がなかったから「やりたくないよー」って言ったんですけど、入ってた方があどけなさや、未完成な部分、未熟な部分を表現できる楽曲になるのかなって。簡単なストロークだけなんですけど、納得いくまで何度も録り直しました。もっとアーティストとして活動し続けていった時に、この楽曲を振り返ってみたらすごい「エモ!」ってなるのかなって。思い出としてもすごくいい経験になりました。
Digital Single「弱虫」アーティスト写真
●アー写、ジャケ写は、モードな衣装で今までとは違う雰囲気ですね。
宮川せっかく髪を切ったし、今までやや顔を隠しがちな写真が多かったので、もっと顔出しの面積を広げて、イメージを一新! アート感や、ファッション感を押し出したビジュアルに挑戦しました。また、今年一年間でやりたい事がしっかり見つかったって事もあって、今までとは一味違った、自分的にも「決まったな」って思える写真が撮れました。
●MVはどんな仕上がりになっていますか?
宮川アー写とは全く違って、24歳にもなって学生服を着ています(笑)。本格的なドラマ仕立てではないのですが、学生時代だった頃を思い出している現代の私みたいな簡単なストーリーになっていて、女優さんと一緒に撮影しました。学生時代の後悔とかコンプレックスが学生服を着てる自分を見ると思い返されて、撮影中に「うわ〜辛すぎる〜」みたいなフラッシュバックがたまにあって難航しましたね(笑)。でも映像としては自分が表現したかったものを監督さんによって(「タンバリンの鳴る丘」と同じ監督さん)色々工夫を凝らしていただいて、面白く仕上げていただきました。
●3年ぶりにバラエティ番組にも出演されたり、意欲的ですね!
宮川今年はデビュー5周年イヤーを控えているので、このままずっと同じことをやり続けるのも性に合わないし、ファンの方にも色んな面を見せて、「宮川愛李ってこんなことするのか!」みたいな驚きを日々感じていただきたいと思っています。今年は何より自分の楽曲に深く関わる機会を増やして、表に出た時に自分が本当に表現したい事を心から自信を持って伝えられるようになりたいなって。
路上ライブを始めて改めて思ったんですよね。やっぱり芯がしっかりされているアーティストや、自分が伝えたいものをちゃんと持っている人って歌に自然とそれが表れるなって。経験がない状態でデビューしたのが引け目というか、劣等感の根源にあって、それを引きずっているのは分かっているので、今年は特に学びの年にして、もっともっとアーティストとしての感性を磨いていきたいと思っています。
そして、現在5周年イヤーに向けて色々な企画を絶賛準備中なんですけど、みんなの喜ぶ顔が見たいがために活動しているところが大きいので、それに向けた準備が出来る事をすごく幸せに感じるし、ファンのみんなも楽しみに待っていてくれたら嬉しいです。