宮川愛李「タンバリンの鳴る丘」オフィシャルインタビュー

SPECIAL

2023.07.08

1年振りにリリースする新作「タンバリンの鳴る丘」について、宮川愛李のオフィシャル・インタビューをお届けします!
TV アニメ『レベル Iだけどユニークスキルで最強です』のエンディングテーマを飾る今作は、デビュー以来最も弾けたサウンドが心躍る鮮やかなポップチューンになっています。自分の頭や心の中に湧き上がったワードをあえてそのまま歌詞にした、リアルな今の宮川愛李が感じられる歌詞にもご注目ください!

Digital Single「タンバリンの鳴る丘」ジャケット原画写真

― 表現者として「音楽」ってかなり危うい表現方法なんですけど、そういう心の危うさみたいなものを外に出していく勇気をもっと持つべきだなとも最近感じています。 (宮川愛李)―

●作品リリースとしては1年振りになりますね。
宮川愛李(以下宮川)振り返ってみればあっという間に過ぎた1年だったんですけど、ファンのみんなが待っていてくれた時間と私の体感とでは全く違う感覚なのかなっていう気もします。私自身は怒涛の1年を過ごしてきたつもりなんですけど、リリースを待っていてくれたり、応援し続けてくれるみんなの事を考えると、この1年の間にもっと色々出来たんじゃないか、もっと大切に生きられた所もあったんじゃないかって、やや自問自答してしまう所もありますね。
●コロナ禍で時間の使い方が変則的にならざるを得ない所もあるので難しいですよね。
宮川確かに。まだ完全に終息していないけど、自粛が続いたあの2、3年間は私の活動歴に影響を及ぼした事も沢山あったので、そこを今後巻き返していけるように、今回の作品がその第一歩になったらいいなと思っています。
●そういう意味では、心躍るポップな楽曲で、新たな第一歩に相応しい作品になりましたね。
宮川ありがとうございます。「タンバリンの鳴る丘」というタイトルからも感じていただけるように、とても賑やかなサウンドで、テンポ感が心地よい元気な楽曲に仕上がりました。実際タンバリンの音は入ってないんですけどね(笑)
●歌詞にもタイトルは登場しませんね。
宮川いつもタイトルは最後に付けることが多いんですけど、今回はデモ段階でこのタイトルを付けていました。実は、“自分の可能性を色々探ってみたい”という事で前々からいくつか楽曲制作をしていた内の1曲がこの「タンバリンの鳴る丘」だったんです。まだタイトルしか付いていないデモ状態の時にアニメのエンディングテーマのお話をいただいて、そこから正式に制作がスタートしました。「タンバリンの鳴る丘」というフレーズの語感の良さだったり、跳ねる感じだったりがアニメの世界観にも合ってるんじゃないかという事で、タイトルはそのまま活かして歌詞を書いていく事になりました。個人的にタイトルはかなり気に入ってます。
Digital Single「タンバリンの鳴る丘」ジャケット
●歌詞はアニメからインスパイアされて作っていった側面が大きいんですか?
宮川タイアップという事でアニメの世界観になるべく寄り添えるように気をつけて作っていったんですけど、それと同じくらいデビューから4周年を迎えた自分の大きな成長を感じてもらえる作品作りを心掛けました。
●ちなみに今回のアニメはどんな内容なんですか?
宮川ざっくりジャンル分けしたら異世界転生とかファンタジーになるのかなと思います。異世界に転移した主人公が、体力や魔力は最弱なんだけど、稀なスキルの持ち主だということが判明して、そのユニークなスキルを使って仲間達と一緒に戦っていくみたいな。要は弱い主人公ならではの逆転劇、冒険ストーリーといった内容です。そこで、異世界で新たな人生を歩んでいく、冒険を始めていく主人公を祝福できるような内容を意識して制作していきました。
●制作全体を振り返って、特に印象に残っている事はありますか?
宮川今まで発表した楽曲の中でもかなりポップで、テンション感も高めの曲になっています。前々から、“声質的にこういう歌が合うんじゃないか”という点を重視しながら曲作りしてきましたが、今回もいつも通り自分の声に似合うか似合わないかを探りつつ、挑戦を重ねながらの制作になりました。
●早いテンポの中で、ボーカルアプローチもしっかり対応できていますね。伸ばす所、言葉尻を短く切る所など、箇所によって細かく歌い回しを変えているのが印象的でした。
宮川今回に関わらず、まず自分一人で「こういう歌い方はどうかな?」と模索しながら3パターンくらい変化をもたせて歌ってみるんです。それをディレクターさんに聴いてもらって、声質や歌い方を決めていきます。「ここは自分が思ってる以上に抑揚つけてごらん」とか、いわば演技指導みたいな感じで(笑)、自分では気づけないもっと意識した方がいい所等をアドバイスしてもらいながら、レコーディングは今回も順調に進みました。
●1番の終わりにフェイクが入ってますが、アドリブですか?
宮川レコーディング中、ディレクターさんから「今の感じすごく良かったから、それを意識した上でもっと大袈裟にやってごらん」みたいに、無意識に出ていた癖の部分を生かしてもらうケースは度々ありますね。ただ意識しちゃうと出来ないんですよ。ちょっとそこがまだ難しいんですけど、毎回頑張ってます(笑)
●おもちゃ箱をひっくり返したような、シンセがメインの立体的なサウンドになっていますね。
宮川アレンジに関しては基本的に作曲者でもあるサカイダユーキさんにお任せで作っていただきました。ただ、この曲に関わらず、自分の中でこういうテンション感が欲しいとか、作品に対してこういう想いやイメージがあるといった軸の部分は共有した上でアレンジしてもらっています。正直言ってアレンジに関しては知識が浅い分、これまでは自分がどれくらい介入していいのか分からない所もあったんです。でも、少しずつですけど宮川愛李としての自信もついてきたし、何より自分の楽曲に対する想いが強いので、この先はもっと積極的に自分の個性や心の内をアレンジにも反映していけるよう深く関わっていきたいと思っています。
●歌詞に関して、最初に出てきたフレーズは覚えていますか?
宮川「おもちゃ箱をひっくり返したみたい」とおっしゃっていただいたように、“遊び心メイン”に作ってみようという想いがあったので、字面が可愛いとか、語感が響いて素敵とか、あまり意味はないけど頭にパッと浮かんだワードをあえて怖がらずに出してみようという意識で作りました。だから「何を言ってるんだろう?」みたいな、文章として成立していないようなフレーズもいくつかあったりするんですけど、そういう言葉こそ今の自分の中から出てきた等身大のフレーズ達だから、勇気を持って歌詞にしていきました。メロディやサウンドとの親和性をいつも以上に重視した歌詞になっています。
●完成した作品を聴いて、改めて自分の中で発見した事はありますか?
宮川発見というか、いつも完成した楽曲を聴いてみると、「うわ〜! もっとここ、こう出来たじゃん!!」みたいに落ち込む事の方が多くて、今回も正直それはありました。勿論作品自体は一つ一つ大切なもので、新作として世に出すのは毎回楽しみではあるんですけど、自分にはまだまだ成長できる余地が沢山あると信じているので、歯痒さや悔しさはいつも感じています。もっと自分の魅力を理解して、自分の癖や個性を良い方向に伸ばしていきたいけど、実際は自分が思っている以上に出来ていないなって、作品が完成する度に思い知らされるんです。だからこそ、完成した作品によって自分自身鼓舞されるというか、もっと頑張らなきゃっていうモチベーションの糧にはなっています。
●MVはどんな感じになりそうですか?
宮川今までの私とはちょっと違う、キュートさを全面に押し出した作品になっています。今回初めましての監督さんにお願いしたんですけど、事前にコンセプトや色々なお話しをさせていただきました。私自身変化をつけたいと思っていたので、今までやってこなかった可愛らしさや女の子らしさ、私の内に潜んでる乙女心みたいなものを出したいという話をさせていただきました。それを汲み取ってくださって、「こういう物があったらフワフワ、キラキラするんじゃないでしょうか?」など色々アイデアをいただきました。小道具を沢山使ったり、シチュエーションも可愛らしくて、ポップなサウンドにマッチした観ていてずっと飽きないカラフルな映像になっていると思います。
●アーティスト写真とジャケット写真は、カメラ目線ですね。
宮川アー写とジャケ写は同じ日に撮影したんですけど、衣裳やシチュエーションは自分から提案させてもらいました。デビューしてから5年目に突入し、大人に成長していく過程を写真でも表現したいなと思って、特に作品リリースの際最初に目にする事が多いアー写はインパクト強めを意識して頑張りました。
●撮影時のエピソードはありますか?
宮川アー写の撮影が難しくて(笑)。オーガンジーの布を後ろから前に自分の手で翻しながら、布がふわっと自分の顔の前に来たらキメ顔を作ってパシャっとシャッターを切るんです。何度もいっぱい撮ったんですよ。おかげで沢山いい写真が撮れまして、その内の厳選した一枚になっています。
毎回私のビジュアル作品って図工みたいな事が多いなって思うんですよね(笑)。制作がかなり肉体寄りというか、結構体育会系な撮影が多い(笑)。でも本気で作品作ってるよなって思える瞬間でもあるし、その結果自分達が意図している事をリスナーの皆さんに感じてもらえるのは嬉しいので、楽曲制作同様、撮影は毎回かなり力を入れています。
Digital Single「タンバリンの鳴る丘」アーティスト写真
●2019年にデビューして4年。人間としても4つ大人になって、物の見方や考え方が変わって、それが楽曲制作やアーティスト活動に影響していると感じる事はありますか?
宮川まず、デビュー当時には受け入れられなかった自分のスキルの低さを冷静に受け止められるようになりました。それに、時々感じる世間や世界の理不尽さや厳しさだったり、時には何がバズるか分からない、タイミングさえあえば結構跳ねたのになって、特にSNS文化だからこそ感じるストレス感や、こんなはずじゃなかったって思っちゃう現実とのギャップ面で苦しんじゃう所は、この数年でやりきった感がありますね。
私は島育ちという特殊な環境で過ごしてきたので、自分で言うのも変ですけど深い愛を注がれながら、大切に育てられてきたっていう自覚があるんです。そんなある種世間知らずな田舎育ちの私が、初めて一人でステージに立つとか、世間の皆様に自分から発信していくみたいな、それまでとは全く違う人生を歩み始めたわけです。当然初めは恥じらいの部分だったり、出来ない自分に苦しんだ事もありましたが、4年という時が経った今はかなり俯瞰で見れるようになってきました。自分の心との付き合い方だったり、自分がどういう形でこの世界で生きていきたいのかをしっかり考えるようになりましたね。
●6月の「SAKAE SPIRING」をはじめ、この夏はライブやイベントにも色々出演が決まっていますね。
宮川最近、同世代のアーティストさんと交流する機会が増えてすごく刺激になっているので、これからも積極的にフェス等にも参加したいと思っています。その他、前々からトライしたいと思っている作曲は勿論、新たな挑戦へのアイデアも色々あって、この間もスタッフさん達と「バンドが出来たら面白いよね」という話をしていたんです。兄以外、決まったメンバーと一緒に活動するって今までやった事がないので、それもまた新たな風だよな〜と思いました。数年音楽の世界で活動させてもらって、楽しい事はもちろん、辛かったり、怒りの感情なんかも時には歌に乗せて届けられたら面白いなと考えていて、であればソロとは違う形態で違った作品性を表現していくのも面白いかな〜と興味が湧いています。
Digital Single「タンバリンの鳴る丘」アーティスト写真 アザーカット
●では最後に、コロナ禍を経験して、音楽の大切さを改めて感じた事はありましたか?
宮川基本的に私の中で音楽の価値みたいなものがコロナ禍の影響で大きく変わった事はないですね。コロナ禍以前から私の中で「音楽」というのは、自分が大きく成長する為に追い求めなければいけないもの、「目標」みたいなもので、常に技術や知識を上げていきたいという想いが強いです。コロナ禍だからこその工夫をして作品を発表していったアーティストさんも沢山いる中で、作品の意図とか、この人どういう狙いがあって作ってるんだろうとか、他の人の作品を聴いたり見たりする度に深く考えちゃうんですよ。そういう所を考えると、私の中ですでに音楽ってふんわりマインドで楽しむみたいなものじゃなくなっていて、コロナ禍関係なしに「音楽」は日々挑戦していくものだし、だからこそ全力で楽しんでいる必要もあるなっていう、表現者として「音楽」ってかなり危うい表現方法なんですけど、そういう心の危うさみたいなものを外に出していく勇気をもっと持つべきだなとも最近感じています。
●そこまで音楽に真摯に向き合う理由はなんですか?
宮川言ってしまえば、すごい昔から音楽が好きでミュージシャンになりたかったというわけではなかったんです。SNSが発達してきたちょうどピークくらいの時に、「音楽でやっていきませんか?」と声を掛けていただいた時に、「何者かになれるんじゃないか!」って、初めはそんな気持ちだったんです。宮川大聖の妹だからじゃなくて、私個人として自分がまだ気づいてない自分の本当になりたいものや、表現したい事を突き詰めていくきっかけになるんじゃないかって。それまで何かに打ち込んで、すごく苦しいとか悔しいとかいう想いを抱いた事って人生の中でなかったんですよ。人生といってもまだ十何年しか生きていない頃でしたけど(笑)。自分の心をさらけ出して強くなっていく方法として、「音楽」は自分に寄り添ってくれるんじゃないかと思ったんです。実際は非常に難しくて、まだまだ駆け出しの存在で、音楽に関して分かってない部分がいっぱいあるし、日々かなり多くの情報を取り入れていかないと私がしたい事ってきっと果たせないんだろうなと感じています。乗り越えられた先に、自信を持って思い描いてる表現を発信出来るのなら、頑張りたいなと思っているんです。
●具体的に思い描いている目標があるんですか?
宮川そうですね。別に段階を踏んでとかではないんですけど、構想としてこれくらい成長出来たらきっと自信がついてるだろうなとか、この仕事を取れたらとか、この番組出れたらとか、結構具体的には考えています。その為に自分の技術面でまだまだだなと思う所があるので、そこをクリアしつつ5周年に向けて成長を見せていきたいと思っています。