宮川愛李「Reboot」オフィシャルインタビュー

SPECIAL

2020.02.26

●フルアルバムが完成した今の率直な気持ちはいかがですか?
宮川愛李ようやく自分の臨む形で制作を進めてこられたかなという実感があります。自分自身と寄り添いながら、少しずつかもしれないですけど確実に成長していることが感じ取れる、とてもいい制作期間になりました。
●成長に手応えを感じながらの制作期間になったのですね。
宮川愛李そうですね。でもその反面、今できる自分の限界がここまでという現実を知らされることも多かったです。楽曲に関しては今回に限らず、これまでに発表してきた全作品に満足しているし、一緒に作り上げてくれたミュージシャンの方々やスタッフさんには感謝しているんですけど、自分のパフォーマンスに納得いってるか?というと100%そうではなくて。 特に今回はandropのボーカル・ギターを担当されている内澤崇仁さんに楽曲を提供して頂いたこともあって、より一層気合いが入っていた分、「まだまだやれるはず」っていう悔しさも正直あります。
●そういう向上心があるからこそ、次の成長へと繋がっていきますよね。
宮川愛李アルバム制作は楽しいことも勿論沢山あったんですけど、目の前のハードルをクリアすることに必死で、今思い返すと、悩んだり、大変だった記憶の方が勝ってますね。それだけ一曲一曲、真剣に向き合いながらの制作でした。
●内澤さんが作曲、編曲を手掛けられた「Reboot」がアルバムタイトル曲になっていますが、曲が先に出来たのでしょうか? それともアルバムタイトルが決まってから楽曲を制作したのでしょうか?
宮川愛李曲が先に出来ていて、アルバムタイトルとしては収録曲が出揃ってから、最終的に決めました。楽曲制作の最中、相変わらず曲名が決められなくてギリギリまで家で考えていたんですけど、ある日スタッフさんに呼び出されて、「いい加減、今日決めましょう!」って(笑)。逃げられない状態の中でやっと決めることが出来ました。
●内澤さんに楽曲提供してもらうことになった経緯は?
宮川愛李内澤さんが楽曲提供されたAimerさんの「カタオモイ」という曲が好きで、兄のライブにゲスト出演させてもらった時にも歌わせて頂いたり、以前からとても思い入れがありました。今回、「名探偵コナン」のテーマソングを再び担当させて頂けるという大変有り難いお話を頂いて、それなら是非内澤さんにお願いできないかとオファーさせて頂きました。
●疾走感溢れるギターロックになっていますが、ここまでエッジの効いたサウンドは新境地とも言えますね。最初にデモを聴いた時はいかがでしたか?
宮川愛李アップテンポな曲は元々好きですし、純粋にかっこいいと思いました。また、アルバム制作を通して、作詞をする上で楽曲と私の相性みたいなものがあるのかなって感じる所がありまして、曲によって自分の得意な言葉使いが自然とメロディにマッチする場合もあれば、なかなか言葉が浮かんでこない場合もあるんですね。そんな中で「Reboot」の歌詞はわりとスムーズに書けました。1コーラス出来た所で内澤さんにも見て頂いたんですが、「自分には出来ない言葉の使い方」と言って褒めて頂けて、それはとても自信にはなりましたね。
●内澤さんは作詞もされる方なので、自分のメロディに愛李さんの言葉が乗ったのを見て、新鮮に感じた所もあったでしょうね。
宮川愛李私の方も、「内澤さんだったらどうするんだろう?」みたいなことを考えながらの作業にはなりましたね。「Reboot」は比較的自分の言葉で書いていけたんですけど、内澤さんに提供して頂いた他の2曲に関しては、「内澤さんだったら?」をかなり意識しすぎてカラ回ってしまうこともありました。
●「Reboot」は「再起動」という意味ですが、タイトルにはどんな想いを込めていますか?
宮川愛李コロナ禍で過ごした去年1年間のことが大きく影響しています。私の場合、SNSのみで活動していた時代から応援してくれているファンの方も沢山いて、そういう皆さんとの交流をとても大切に活動してきました。でもこういう状況になってしまい活動範囲が限られる中で、私自身も孤独感を強く感じるようになりました。「いったい自分に何が出来るのか?」……悩み、自問自答し、そうして思ったのが、「作品を通してもう一回自分の存在をみんなにアピール出来たら」ということでした。 制作中はなるべくファンの方の想いを感じ取りながら、「2021年は改めてファンの方と深く関わっていける一年にしたい!」「もう一度一緒にやり直しましょう、再起動しましょう!」という想いを込めて、このタイトルにしました。
●歌詞はサウンドとリンクしたハードな世界観ですね。
宮川愛李大人しい歌詞ではないですね。「こういうストーリーです」って説明しちゃうと歌詞の解釈が限定されてしまうので、聴いてくださる方それぞれの受け取り方に任せたいんですけど、先ほどタイトルに込めた意味合いについてお話した通り、「私個人の新たなスタート」っていう意味もあるので、ちょっと背伸びをしたというか、「強い意志で歩いていこう!」みたいな想いを込めています。
●ボーカルは、挑発的な感じと、愛李さん特有のキュートな声質との絶妙なバランスが保たれていますね。レコーディングはどうでしたか?
宮川愛李今までの歌い方では通用しない部分もあって大変でしたね。納得のいくテイクが録れるまで繰り返し録り直して、かなり時間をかけました。
●ボーカルレコーディングには内澤さんも立ち会われたんですか?
宮川愛李歌入れの時はいらっしゃらなかったんですけど、楽器レコーディングの日にスタジオにお邪魔させて頂いて、その時に楽曲についてもお話させて頂きました。「現在の私の歌声だったり、今私が書く歌詞というのは、今しか出てこないものだから、伸び伸びとありのままを大切に」という様な有り難いお言葉を頂いて、その時ちょうど作詞で悩んでいる時期だったので、とても救われました。
●ライブ感溢れる楽器陣の演奏も素晴らしいですね。
宮川愛李今回もお馴染みのミュージシャンの方々が参加してくださいましたが、私が見たレコーディングの中で今回は特に盛り上がっていたと思いますね。ギターの音に対して、「悲しみの成分と怒りの成分をうまく混ぜて」みたいな会話をされていて。まだ音楽経験が浅い私には理解しきれないプロの演奏家のやりとりが飛び交っていて、音楽の深遠を覗いた気がしました。すごく刺激になるし、毎回貴重な体験をさせて頂けて本当に感謝しています。
●「Reboot」のMusic Videoもかっこいいですね!
宮川愛李完成した時は達成感でいっぱいだったんですけど、今になると何だかちょっと笑えてくるんですよね。単純に自分の変わりようというか、ここまで演るんだって、思い切りの良さに我ながら笑えてきちゃって(笑)。それくらい今回は根っから変えていこうという気持ちで、衣装も含め、表情や動き等、今までのテイストから大きく変えるイメージで臨みました。今回の挑戦によって、今後MVでも色々なことにチャレンジしてみたいという欲が出てきましたね。
●撮影秘話はありますか?
宮川愛李夕陽が沈む頃から翌日の朝にかけて撮影しました。橋を歩いてる最初に出てくるシーンは一番最後の方に撮影したもので、よ〜く見ると遣り切った、すごい疲れた顔してます(笑)。コロナの影響もあったので感染対策をしっかりしつつ、誰もいない夜の街を走ったり、クルクル回ったり、開放的でとても楽しい撮影でした。
●3曲目の「Stampede」は、どういう意味がありますか?
宮川愛李言葉としては、「大勢で行動を起こす、動かしていく」といった意味があると思うんですけど、タイトル的には「みんなで両手を上げて走っていく、大勢で起こす行動のパワー」みたいことをイメージして付けました。
●ボーカルに関して、サビで声を揺らしたり、エンディングでフェイクしてみたり、技術的に難しくなかったですか?
宮川愛李アルバムに収録した新曲の中では一番早く録り終えたんですけど、残りの曲をレコーディングしている最中に、あえてもう一度歌い直してみました。すると、この曲と向き合って間もない時に歌った声と、曲を知り尽くしてから歌った声とでは色々変化があったので、最終的にバランスよくミックスしていったんです。例えば、雰囲気で歌った方がいい箇所は最初に歌ったボーカルを生かしたり、サビ途中で声を揺らす歌い方の所は録り直したバージョンを採用する等、ブラッシュアップしながら完成させました。
●5曲目の「lyrical」はピアノが軽快なロックポップチューンですね。タイトル通り、軽やかだけど、サビでは情感溢れた、表情豊かな歌い方が印象的でした。
宮川愛李この曲こそ、歌詞も、ボーカルもすごく苦戦しました。「lyrical」と「思案ブルー」はSoft Boiled Rockersさんにアレンジして頂いていますが、非常に作り込まれたサウンドになっていまして、その完成度に私自身が押されちゃった所がありましたね。そういう所もまだまだだなって反省点なんですけど、じっくり時間をかけて楽曲と向き合いながら、結果的に可愛らしい楽曲に仕上げることが出来て良かったです。今回のアルバムの中でこの2曲はこれまでの私らしさが一番感じられる楽曲になっていて、きっとファンの方にも気に入って頂けるんじゃないかと思っています。
●「lyrical」には、「灰色の世界で 心は動いてる」といったフレーズが登場しますが、コロナ禍の中で感じたことが影響した歌詞になっていますか?
宮川愛李それは意識していなかったですね。この曲は一番意味がありそうで、実はそれほど言葉の意味を重視していないフレーズを繋げて作った歌詞になっています。でも、今こういう状況下で聴いてくださる方の中には同じように感じ取る方もいらっしゃるかもしれませんし、この曲に限らず、受け取り方は聴き手に委ねたいですね。
●6曲目の「思案ブルー」は、古き良き時代のJ-POPのキャッチーさが感じられるメロディに心くすぐられました。
宮川愛李そうですね。その辺りは意識して歌っていきました。この曲は最初に書いた歌詞が、「大人っぽすぎる、刺激的すぎる」とスタッフさんに指摘されて書き直しました。可愛らしい小悪魔的なイメージはそのまま生かせたかなと思っています。
●ボーカルは、譜割やキーの高低差など難しそうですね。
宮川愛李そうなんです! 高いキーが出なくて大変でした。歌詞をリテイクしながらのレコーディングだったので、脳が疲れ果てて、体力的にも落ちていく一方だったので、思うように歌えなくて何度もチャレンジしました。努力の跡をお聴き頂けたら嬉しいです。
●7曲目の「ぐ」は、内澤さん作曲、編曲の綺麗なバラードナンバーですね。ここまで壮大に歌い上げるバラードは初めてですよね?
宮川愛李はい。初挑戦ということもあって、一生大事に出来る大切な楽曲になればいいなという想いで、作詞から力を入れました。
●愛李さんの声は、ノスタルジックな曲やバラードにとても合うと思うのですが、実際歌ってみていかがでしたか?
宮川愛李難しかったです。私の場合歌唱力で勝負するタイプではないし、私にしか出せない声色だったり、表現力で伝えていくしかないと思っていて、だからあまりバラードって意識しすぎちゃうと余計良くない方向にいっちゃうと思ったんです。自分らしさを忘れないように、周りから長所と言って頂ける「張りのある声」だったり、「綺麗な声」という部分を意識しながら、繊細にというよりも、パワーで歌いきった印象がありますね。
●メロディ自体とても綺麗で切ないですが、文学的な歌詞がより一層曲の世界観を引き立てていますね。
宮川愛李「8月」というフレーズがあるので、夏を背景に描いているんですけど、夏らしい風の感覚だったり、タイトルにもなっているように静かな水辺みたいなイメージが伝わればいいなと思っています。
●ラストを飾る内澤さん作曲、編曲の「わすれもの」も、存在感溢れるバラードナンバーですね。
宮川愛李これも他の曲と同時進行で作っていたのですが、歌詞は内澤さんの世界観を大事にしながら、比較的サクっと書けました。ボーカルは、囁きかけるような、一つ一つ言葉を大切に歌っていくような内澤さんの歌い方をどうにか取り入れられないかと、自分なりに意識しながらレコーディングしていきました。
●曲順は最後に決めましたか?
宮川愛李はい。音楽知識の豊富な先輩スタッフの方々の意見も聞きながら、色んなバージョンを組んでみて、何度も聴き比べながら決めていきました。みんなで相談しながら決めていく工程も楽しかったです。
●最後はバラードで締めたいとか、この曲は絶対ここに入れたいとか、愛李さんがこだわった所はありましたか?
宮川愛李今回の作品では「Reboot」や、初挑戦でもあるバラードがリード曲になると思うんですけど、実は私の中では「Stampede」が聴いて欲しい曲の上位に入っていて、何曲目に収録するのか重要視していました。「Reboot」の次に「Stampede」が来ることで、個人的にもすごく気持ちいいですし、聴いてくださる方にもどんどん気持ちが高揚してもらえる曲順になっていたら嬉しいです。
●ジャケット写真も素敵ですね。アイデアは出されましたか?
宮川愛李例えば光を使いたいとか、青っぽくしたいとか、今回もだいぶ意見を出させて頂きました。ジャケットもMVも、今回は新しい宮川愛李を表現するために、メイクさんも撮影チームも全て初めてのスタッフさんで制作したんですけど、新鮮だったし、とても刺激になりました。
【初回限定盤】(JBCN-9003)
【初回限定盤】(JBCN-9003)
【通常盤】(JBCN-9004)
【通常盤】(JBCN-9004)
●購入特典のオンラインイベントも楽しみですね。遠方でも参加出来ると喜んでいる方も多いのではないでしょうか?
宮川愛李本来であれば直接お会いしたい所ですけど、今は我慢ということで、自分なりに一生懸命工夫を凝らして、ファンの方と一緒に遊べる楽しい企画を考えました。
●ワンツーマンで話が出来る企画も、ファンの方にとっては貴重ですよね。
宮川愛李以前にも開催したことがあるんですけど、ファンの方を見ちゃうとつい興奮して私の方が喋りすぎちゃうんですよ。それで「自分の伝えたいことが何も話せなかった!」みたいな不満のコメントが届いて、「反省!」みたいなこともありました(笑)。どうしても時間に限りがあるので難しいんですけど、これまでの反省を生かしつつ、私自身もみんなと交流出来る大切な時間を今から楽しみにしています!