宮川愛李「キミトソーダ」オフィシャルインタビュー

SPECIAL

2022.02.15

●昨年3月にリリースしたアルバム『Reboot』は、コロナ禍の中、ネガティブな気持ちをリセットして前に進んでいきたいという思いを込めた作品でしたね。残念ながら世の中はあまり状況が変わっていませんが、愛李さん自身は心境や日常に変化はありましたか?
宮川愛李『Reboot』を発表したという事もありますし、デビューしてもうすぐ4年目に突入するという気持ちの変化もあって、「何事もまずはやってみよう!」という精神を音楽の世界でも持つ事が出来るようになってきたと感じています。デビューしたての頃はどうしていいか分からない事だらけで、今思うと常に怯えがあったと思うんですけど、最近は自分なりにやりたい事や、目指していく姿みたいなものを想像出来るようになってきていて、それは大きい変化だと思いますね。
●様々な挑戦を1つ1つクリアする事によって自信がついてきたんでしょうね。
宮川愛李そうですね。私の場合、ライブが全然出来ていないのがすごく残念ですし、本当はめちゃくちゃやりたいんですけど。 でも、ラジオのお仕事や、最近ではゲーム配信の実況チャンネルをやらせて頂いたり、音楽以外のスキルも身についてきてるところはあって、そういう面ではマルチに活動出来る強みが出てきているんじゃないかなと思います。
●『Reboot』を発表した後、楽曲制作は続けていたんですか?
宮川愛李今回の配信シングルや、この先控えているリリースの準備を去年1年間で行なっていました。また、ボイストレーナーの先生が新しく変わって、歌い方も大きく変化してきた一年だったと思います。特に去年末頃から急な成長過程に自分がいる感じがしているんです。歌唱に関してもそうなんですけど、一気に目の前の状況が変わってきちゃって、ちょっと自分自身困惑してる状況なんですよね。デビューから音楽のスキルがちょっとずつ上がってきているとは思うんですけど、そうなるにつれて「本当の自分の歌って、いったいどんななんだろう?」みたいな漠然とした悩みが募ってきて、それを突き詰めている最中ではあります。
●配信シングル「キミトソーダ」は、2/14からスタートのドラマ「おじさんが私の恋を応援しています(脳内)」のオープニング主題歌ですね。
宮川愛李はい。「おじ恋」と訳すらしいんですけど、原作漫画をドラマ化するにあたってオープニング主題歌を担当させていただく事になり、そこから「キミトソーダ」の制作がスタートしました。原作は、事故に巻き込まれた事がきっかけで、主人公のOLの女の子の脳内に、営業一筋30年のおじさんサラリーマンの意識が飛び込んできてしまい、おじさんとの脳内会話を通じて、仕事や恋愛について主人公の成長を描いていくというあらすじになっています。ファンタジック要素も盛り込まれた新しいアプローチの漫画だったので、歌詞も個性的な内容にしたいと思いました。また、今回最も鍵(キー)になっている「おじさん」を、ジャケットやミュージックビデオにも盛り込んだ作品作りを考えていきました。
●ジャケットに描かれてる「おじさん」は、原作漫画に登場する「おじさん」とは違いますよね?
宮川愛李はい。ジャケットの「おじさん」は、私がイメージする「どこかにいるおじさん」です(笑)。「優しそうで」とか、自分がイメージするおじさんの特徴をデザイナーさんに伝えつつ、相談しながら作り上げていきました。
●原作漫画を読んだ後、どのように楽曲に落とし込んでいったんですか?
宮川愛李恋愛ドラマではあるんですけど、あまりこってりした感じにはしたくありませんでした。「気軽に、誰にでも楽しめる恋愛」みたいな歌にしたいと思って、「爽やかで、青春感のある」というイメージを大切にしつつ作詞していきました。サウンド的には、じわじわとテンションが高まっていって、サビで花火が打ち上がるみたいに一気に盛り上がる曲にしたいと思っていたところ、吉岡大地さんのデモがまさにイメージ通りだったので、この曲ならきっと素敵な歌が作れるという直感で選びました。
●歌詞の中で、ポイントになっているフレーズはありますか?
宮川愛李書き進める中で、「爽快感」の比喩表現として自然と浮かんできたのが「ソーダ」というワードでした。今回の歌詞のメイン、主役のフレーズになっていると思います。
●タイトルを全てカタカナ表記にしている意図はなんですか?
宮川愛李直感的に決めたんですけど、「君とソーダ」って表記にしちゃうと、なんかこう〜“愛っぽいな”と思って(笑)。もっとライトに、何も考えずに全てが楽しい時期の恋愛を想像して欲しいという思いがあったので、全部カタカナにして視覚的にも軽やかな印象を与えたいと考えました。
●「愛されていたいってそんなにズルくて悪いことですか?」というサビ頭の歌詞が、特にインパクトがありますね。
宮川愛李「これって恋なんだ。私、この人のこと好きなんだ」って、段々と自分の恋を自覚する瞬間って一番楽しいよなって思ったんです。「一番、青春感があるな」って。だから、恋して盛り上がっているストレートな心情をサビで表現したいと思いました。サビ頭のフレーズは、恋をした時に湧き上がる開き直りみたいな、「悪いことなの?!」って強気で恋愛したい人のフレーズとして書きました。
●多くの女子が、好かれたくてあざとい態度をとってしまう事ってありますよね(笑)。でも、愛李さんにはそういう器用さはなさそう!!
宮川愛李あ〜、その通りです。器用じゃないし、私はそういう事出来ないだろうな〜。大体、“あざとく”がよく分からないです。だからこそ今回の歌詞にも、サビのフレーズみたいなストレートな物言いだったり、節々に本音の部分を乗せられていると思います。
●資料には、「恋愛の楽しさと悲しさの両面を兼ね備えた世界観を疾走感あふれるサウンドに乗せて歌い上げた一曲」と説明がありますが、聴いた後はスカッと、前向きな気持ちになれる曲だと感じました。
宮川愛李まあ、恋愛って悲しむためにするものじゃなさそうですよねっていう……。「恋」ってすごく尊いもので、触れたら壊れてしまいそうみたいなイメージはあまり持ってないんですよ。元々在るようで無いような存在の、すごく不確かなものだなって。形が見えるわけじゃないし、色もついてないしと思っていて。だから、恋愛を匂わせるような作詞をする時はいつも一歩引いて、「自分が書いた恋愛の歌詞に溺れないように」っていうとちょっと臭いんですけど、飲み込まれないようにっていう冷静さはしっかり持ちながら書いています。特に今回の曲はあまり悲しい印象で書いたわけではないので、「悲しい事もひっくるめて、好きだから恋してるんじゃないですか!」っていうメッセージを込めていますね。
●愛李さんらしい、可愛らしさや芯の強さが表れた歌声が印象的でしたが、レコーディングはいかがでしたか?
宮川愛李最初に、どれくらいのテンション感でとか、こんな声色でとかをディレクターさんと決めてから歌うんですけど、可愛らしいとか芯があるとか、私らしいと言われる部分についてはあまり意識したことがないんですよ。冒頭でもお話したように、少しずつ歌唱に対する技術を勉強している成果もあって、歌いやすくはなってきてるんです。だから今回のレコーディングもスムーズだったんですけど、自分の中では知識が増えるほどに、「私らしさとは? 私の持ち味って?」という疑問が湧いてきて、現状は答えが見つからないまま、とにかく必死に今の自分に出来る最大限を込めてレコーディングに臨んでいます。「この歌声がみんなに聴かれるんだ」って思ったら、今でも初心と全く変わらずただただ無我夢中になってしまいますね。
●コーラスもたくさん入っていますが、こちらはご自身ですか?
宮川愛李はい。キーが高くて大変だったんですけど、自分の声が重なり合うのって面白くて、コーラスはいつもすごく楽しいです!
●楽器のレコーディングには参加されましたか?
宮川愛李ベースの方が初参加だったり、全然ライブが出来なくてお世話になっているバンドメンバーの方にもしばらくお会い出来ていなかったので、ご挨拶も兼ねてスタジオに伺いました。久しぶりに色々お話が出来て楽しかったです。
●ミュージックビデオはどんな感じになっていますか?
宮川愛李実写とアニメーションを織り交ぜた作品になっていて、ジャケットにも描かれた「おじさん」がミュージックビデオの中では恋を応援してくれる妖精的な立場で登場します。原作のオマージュと言いますか、原作を元にイメージを膨らませていきました。
●ジャケットに描かれた「おじさん」が「ソーダ」のわりに小さいのは、妖精のイメージもあるからなんですね。
宮川愛李そうなんですよ。実寸だとしたらソーダめっちゃでかい!おかしなことになりますよね(笑)。ジャケットの「ソーダ」と「おじさん」は、二人で寄り添ってる恋人同士のイメージなんですよ。私の中では、恋という不確かなものの存在、総称を「ソーダ」に見立てて、そこに寄り添ってくれる妖精のおじさんみたいなイメージなんです!
Digital Single「キミトソーダ」ジャケット
●ところで、BREAKERZとのコラボ「月夜の悪戯の魔法」が話題になっていますね。
宮川愛李BREAKERZさんの新曲「SWEET MOONLIGHT」の『名探偵コナン盤』に収録される「月夜の悪戯の魔法」のアコースティックバージョンに参加させていただきました。BREAKERZさんは、これまでも過去の曲をアコースティック編成にしてカップリングに収録する形が続いているそうで、今回は「名探偵コナン」のエンディングテーマ繋がりで、「月夜の悪戯の魔法」が選曲されたそうです。この曲の歌詞は女性目線で描かれているという事もあって、「女性ボーカルを入れたいね」という話が持ち上がり、コナンで流れていた私の「Reboot」を見たDAIGOさんが私の名前を挙げてくださったそうです。
●こちらも新たなチャレンジとなりましたね。
宮川愛李はい。とても貴重な経験をさせていただきました。他の方が作った曲を歌う難しさもありましたし、デュエットというハードルの高さもありましたし、私自身も何度かコナンの主題歌を担当させていただいている責任感もあり、また何よりBREAKERZさんの作品に込める思いに応えたいという気持ちもあって、自分なりに歌詞を深く噛み砕いた上で歌わせていただきました。
●ボーカルレコーディングでは、DAIGOさんから何かリクエストはありましたか?
宮川愛李イメージなどは伝えられなくて、だからこそ逆に難しかったですね。私は結構地声にパワーがある方なんですけど、「月夜の悪戯の魔法」は柔らかくて、しなやかという女性の表情を想像させる楽曲かなと思ったので、一言ずつ丁寧に、女性から語られる愛の言葉というイメージで歌っていきました。
●ミュージックビデオの愛李さんの表情からも伝わってきました。
宮川愛李ありがとうございます。そう感じていただけたら良かったです。ミュージックビデオの撮影の合間にDAIGOさんとお話させていただいたんですけど、作詞に対するDAIGOさんの姿勢なども聞かせていただいて、とても実のある時間になりました。
●では最後に、2022年はどんな一年にしていきたいですか?
宮川愛李今後SNSなどに自分で作ったオリジナル曲をどんどん投稿していこうってことで、制作スタッフさんにも協力していただきながら準備を進めています。ゆくゆくは自分でミュージックビデオも作ったり、同世代に届くような音楽や映像を作ってみたいと考えています。私の力でどれくらいの人の心を動かせるか、そんな挑戦をしていきたいですね。それから、今回のBREAKERZさんとのコラボが私の中でとても大きな出来事になったので、今年はもっと他のアーティストの方々とも一緒に作品作りをしたり、コラボしたりしながら、また新たに学べる事を探して成長していきたいと思っています。